2015年4月21日火曜日

第343話 時を惜しむ その2

古代ローマの格言「CARP DIEM」から派生して、前話その1では、時代は遠く中国の古の唐詩を例えて「時を惜しむ」のテーマを考えてみました。

今回、その2では、今一度イタリアに戻りまして、古都フィレンツェは、ルネッサンスの黄金時代・ロレンツォ・ディ・メディチのことば〔詩〕を手繰ってみたいと思います。

メディチ家3代目当主ロレンツォは、大変な政治力、外交手腕を持ちながら、なおかつ正に文芸復興を自ら興して、数多くの芸術家の育成をしたことでも有名な人であります。

さて、そのロレンツォの作品に「バッカスの歌」と名付けられた詩が、大変流行ったということです。全くの想像でしかありませんが、イタリアの多くの町や村で歌われたのかも知れません。その一部をご紹介します。

”青春は麗し、されど逃れ行く
楽しみであれ、明日は定めなきゆえ”

1830年代ローマに滞在したハンス・アンデルセンが著した「即興詩人」は
明治時代、森鴎外によって美しい文語体による日本語で紹介されました。
今、手元には安野光雅著「口語訳 即興詩人」〔山川出版社〕があります。

そのなか「五十九 ヴェネツィア へ」p510~p516を参照します。
p515にある詩〔少年が船のなかでヴェネツィア民謡を歌う詩〕を列記します。

         5番目の歌
恋せよ
こころの若く 血の熱いうちに
矢のように 時は過ぎる
永遠を 願う人の気も知らず

上に記しました詩は、「CARPE DIEM」の真髄を唱えているように思えました。キーワードは、”時は過ぎ去る”のでありますから、”今を掴め”ねば
為らない故であります。

また、※歌曲「椿姫」の”乾杯の歌”の中では、この様な意味のことです。
※作曲G/ヴェルディ〔1813-1901〕

”この世の命は短く 空しく過ぎてしまう
 またと帰らぬ日のために 盃を上げよ
 青春の日は短く 人の世の命ははかない夢と
 すぎてゆくよ”

ここでも伝わる詩の趣旨はよく似ています。

古代ローマに始まって、唐の時代、イタリアのルネッサンス期、そして19世紀の詩歌などを拾い上げてきましたが、14世紀日本の書物から見いだしたものに「徒然草」がありました。

第108段 寸陰を惜しむ人なし。これ、よく知れるか、愚かなるか。
       以下略。

やはり、”時を惜しむ”を書いているように思えます。古今東西、時に寄せる人の想いは変らないようでございます。

最後になりますが、大正時代に創られた「ゴンドラの唄」をご紹介しまして、私も時を惜しみたいと思います。おつき合い有り難うございました。

ゴンドラの唄  作詞 吉井 勇   作曲 中山 晋平

いのし短し 恋せよ乙女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日の 無いものを


             古の 人の想いは 今も尚
             変らず生きる 熱きこころに
                            元鷹  

         

                 






0 件のコメント:

コメントを投稿