”トリトーネの噴水”が、再びホラ貝から冬空に向かって水飛沫を上げ
始めました。
11月12日付新聞IL MESSAGGEROのCRONACA DI ROMA p47
に掲載された記事に誘発されて、バルベリーニ広場に化粧直しされた
”トリトーネの噴水”を見学に行ってきました。
これほどに真っ白なトリトーネの噴水を見たのは初めてです。
まるで新しく造り直したかのように生まれ変わりました。
トリトーネの彫刻を真ん中に収めた大きな水盤には、満々と水を湛えて
薄いみどり色が輝くようでした。
この噴水は、彫刻家G/ロレンツォ・ベルニーニが45歳(1643年)の時に
法王ウルバヌスⅧ世の命を受けて創ったものです。
ベルニーニは比較的長生きした(82歳にて没す)芸術家ですが、このトリトーネの噴水は、彼の噴水創りへの意欲《パッション》を感じさせます。
ところでバルベリーニ広場と云えば、森鴎外がアンデルセンの「即興詩人」を文語体で翻訳した訳ですが、書き出しにはこの広場が出てきます。
手元にある「口語訳 即興詩人」安野光雅著/山川出版社より、その部分をご紹介致します。 《p-18 1行-3行抜粋》
”ローマへ行ったことのある方は、きっとバルベリーニ広場にも行かれ たことがあるだろう。そこには、ギリシャ神話に出てくる海神トリトンがほら
貝を吹いているところをかたどった噴水があって、その貝からは、
数メ-トルばかりも高く水が噴き出しているのを見られたにちがいない。”
何と簡潔で的を得た見事な描写なのでしょうか!
まるで眼前にトリトーネの噴水が水飛沫を上げているかのように、
シンプルですが、一句一句が噴水のイメージを作りだしています。
さて、1833年-1834年にアンデルセンは、この噴水の近くのアパートに住んでいたそうです。そういえば小説の主人公アントニオの家もこの
バルベニーニ広場の近くに設定していたことを想い出しました。
この時代には、ヨーロッパの貴族・文化人らは競って、アルプスを超えて南国イタリアを目指すのが憧れだったそうです。
この即興詩人は、小説の面白さはもとよりイタリアの観光本代わりに、各観光地《ナポリ・フィレンツェ・ヴェニス・など》が小説の中に紹介されているために広く翻訳され、多くの読者にイタリア旅行の疑似体験を楽しませてくれたのではないでしょうか。
森鴎外の文語体と安野光雅著の口語訳とを並読してみたいものです。
バルベリーニ広場の中央に建つトリトーネの噴水
やや中央にはvia Tritoneが走り、トレヴィの泉へ向かいます。
トリトーネの噴水 正面から撮影
海神トリトーネは空に向かって水を
吹きあげています。
ウルバヌスⅧ世《在位1823-1844》の家紋は
3匹の蜂です。噴水にしっかりと印されています。
広場向うには「蜂の噴水」も映っています。
寒空に ホラ貝の噴き出す 水高く 元鷹
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